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認知症ケアの意思決定支援|毎日の「選ぶ」を支える声かけと工夫

本を選ぶ高齢者の希望を、同じ目線で聞く蒼

午後の活動を案内するとき、「何をしたいですか?」と聞いても返答がなく、次にどう声をかけようか迷うことはありませんか。予定の時間が近いと、つい職員の方で決めたくなる場面もありますよね。

認知症のある方が、自分の希望を伝えやすくなるには、聞き方や物の見せ方を変える工夫があります。今回は、読書や塗り絵など、日々の過ごし方を選ぶ場面を中心に考えます。以下の会話や記録は説明用の架空の例で、実際の利用者さんの体験談ではありません。

認知症ケアの意思決定支援は、毎日の選択から

何を着るか、どの活動に参加するかも、本人にとっての大切な選択です。厚生労働省の意思決定支援ガイドライン第2版は、本人の視点に立ち、意思を持つこと、伝えること、生活に反映することを支える考え方を示しています。認知症があるという理由だけで、職員が代わりに決めるものではありません。

たとえば「今日は全員で塗り絵」と決まっていても、「本を読みたい」という希望はありませんか。参加する人数をそろえることに気持ちが向いたら、いったん本人の望む過ごし方に目を戻してみましょう。本人が自分で選べている場面では、必要以上に口を出さないことも大切です。

本と塗り絵の道具を見せて、希望を聞く蒼
実物を使うときも、示したもの以外の希望を話せる聞き方にします。

まず希望を聞き、伝わりにくければ実物を見せる

最初から選択肢を狭めず、「今、どんなことをしたいですか」と聞いてみます。返答しにくそうなら、本や塗り絵の道具を見せながら、本人が比較できるように説明する方法があります。

声かけの例

「今、何をして過ごしたいですか」
言葉だけでは伝わりにくい様子なら、目の前に道具を置いて、
「こちらの本を読むこともできます。こちらは塗り絵です。ほかにしたいことはありますか」

本を選んでほしいから本だけを近づける、といった誘導になっていないかも振り返ります。2つ見せる例は、必ず二択で聞くという決まりではありません。「どちらもしたくない」「今は休みたい」という希望も受け止められる聞き方にします。

本人が手を伸ばせる位置に道具を置くなど、見るだけで分かりにくい部分を補うことも考えられます。使う物は本人の状態や支援計画に合わせて選びましょう。

返答を待ち、表情やしぐさも確かめる

問いかけた直後に「では塗り絵にしましょう」と続けると、本人が考える時間を取りにくくなります。説明をいくつも重ねず、いったん言葉を止めて待ちます。落ち着ける場所や時間を選ぶことも、希望を聞くための準備です。

専門職向けの意思決定支援リーフレットでは、言葉以外の表情や動作にも目を向け、決断を急がせない配慮が整理されています。うなずいたからといって、こちらの説明をすべて理解し、同意したと決めつけないようにします。

たとえば本を指さしたら、「こちらの本を読みたいですか」と確かめます。顔を背けた場合は、その動作だけで「本が嫌い」と記録せず、「どうしましたか」と尋ね、分かる範囲で気持ちを確認しましょう。

蒼:答えがすぐに出なくても大丈夫。「選んでもらわなきゃ」と急ぐ前に、待つ時間が取れているか振り返ってみましょう。

高齢者が考える時間を急がせず、そばで待つ蒼
その場で選ばないことも含め、本人のペースを大切にします。

「今は選ばない」も尊重し、決めた後も聞き直す

本人が「後にする」と話したときは、その場で活動を決めることを優先しないようにします。「少ししてから、またお聞きしてもよいですか」と次の声かけについて相談する方法もあります。

一度本を選んだ後に「やっぱり皆のところへ行きたい」と言われたら、先ほどの返事を約束のように扱う必要はありません。気持ちが変わったことを確かめ、今の希望に合わせて調整できるか考えます。

希望の実現に安全上の懸念がある場合も、「危ないからだめ」で終わらせず、どの点が心配か、どんな支援があればできるかを本人と関係職員で考えます。個別の介助方法や外出の可否は、本人の状態、支援計画、職場の手順を踏まえて検討してください。

選んだ内容だけでなく、聞き方と反応を残す

次の職員が同じように確認できるよう、実際に聞いたことと本人の言葉を記録に残します。毎回同じ活動を勧めるためではなく、本人に伝わった説明の仕方を引き継ぐためです。

架空の記録例

14時、談話室で希望する過ごし方を尋ねた。返答がなかったため、本と塗り絵の道具を示して説明。本人が本を指さし、「これを読みたい」と発言。読書の希望を確認し、本を手元に置いた。

「何も選べない」「いつも本が好き」といった評価に置き換えず、その場のやり取りを書きます。記録の文章に迷うときは、介護記録の書き方|事実と感想を分けて伝える5つのコツも参考にしてください。

まとめ:本人が選べる場面を、ひとつ大切にする

日々の意思決定支援では、まず本人の希望を聞き、必要なら実物などを使って伝え、返答を待ちます。選ばないことや、途中で気持ちが変わることも含めて尊重しましょう。

次に活動を案内するときは、職員の予定を伝える前に「今日はどう過ごしたいですか」と聞くところから。選ばれた内容だけでなく、どう伝え、どんな反応があったかも振り返ってみてください。

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参考資料

資料確認日:2026年11月5日。

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